第9回 八雲PC読書会報告

第9回 八雲PC読書会
開催日時: 2025年9月26日(金)13:00~15:00
開催場所: 八雲倶楽部
出席者: 6名

読書会報告
 秋の一日、今回の読書会では「幸せとは何か」という根源的な問いを手がかりに、科学と文学の両面から語り合いました。小林武彦の進化生物学的視点と、宮沢賢治の作品群が交錯し、参加者それぞれの思いが豊かに広がる時間となりました。

  1. 「幸せ」をめぐる問いから

     まず取り上げたのは、小林武彦『なぜヒトだけが幸せになれないのか』(講談社現代新書, 2022)。
    進化生物学の視点から「人間はなぜ動物のように満ち足りないのか」という挑発的な命題を投げかけます。
    読書会では「そもそも“ヒトだけが幸せになれない”という言い方自体に違和感がある」「むしろ人間だからこそ深い喜びを感じることもあるのでは」といった意見も出され、活発なやりとりになりました。この問いかけが、賢治作品を読む際の“幸せとは何か”を考える大きなきっかけとなりました。
  1. 宮沢賢治をめぐって

     続いてのテーマは宮沢賢治。今回のメインは『銀河鉄道の夜』でした。
    • Iさん:おすすめとして『ポラーノ広場』『風の又三郎』を紹介。子どものころから心に残るオノマトペを披露し、賢治の独自の言葉の力を指摘。
    • Tさん:幼少期に耳にした「どっどど どどうど どどう……」のリズムが今も焼き付いていると話し、それをきっかけに映画やラジオドラマの思い出話に広がりました。
    • Oさん:賢治が社会的・経済的に恵まれた境遇にありつつ、弱い者に手を差し伸べきれない後ろめたさを抱いていたのではと分析。また「仏教徒でありながら、作品にキリスト教的な匂いを感じるのはなぜか」という問いも投げかけられました。

• Sさん:『注文の多い料理店』について、「自分が食べられるという逆転の発想が鮮やかで、童話というより大人向けの深みがある」とコメント。
• Pさん:賢治の作品は「全く古びておらず、現代にも通じる普遍性がある。戦前から戦後まで教科書に載り続けたこと自体がその証拠」と語りました。

 3.幸せをめぐる対話

 小林武彦の問題提起と、賢治が『銀河鉄道の夜』で問いかけた「ほんとうの幸せ」は自然に重なり合いました。
「幸せは誰かのためにあるのか」「人はなぜ満たされないのか」――科学と文学を横断する形で、今回も参加者それぞれの思いが交錯し、豊かな対話の時間となりました。                             (文責 正田、小原) 

次回  10月31日(金)13時~
次々回 11月28日(金)13時~ 課題本『国銅』帚木 蓬生 新潮文庫

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