2025年5月22日、初夏を感じる日差しもみられるなか、東京都福生市の石川酒造を訪れ、日本酒づくりの仕組みと独自の工夫などについて説明を受けました。
石川酒造の創業は文久3年(1863)年で、160年以上の歴史を誇る蔵元です。創業銘柄は「八重桜」で、その後「八重梅」に改められ、昭和8年(1933)に現在の「多満自慢」となります。地元が多摩地域であることや、多くの人たちの心を満たしたいという願いを込め、「多満自慢」と命名されました。多くの蔵元が複数の清酒銘柄を持っているなか、石川酒造は現在も「多満自慢」のみで、いかにこの願いに拘りがあるかがうかがえます。
明治20年には日本酒だけでなくビールも手がけます。しかし、当時王冠の技術がなく、ビンが破裂しやすいなどの理由で一旦撤退しました。その後、平成10年(1998)に再参入し、現在は各種の地ビールも生産しています。
そして、6棟の国登録有形文化財や巨大な欅など石川酒造が歴史とともに育んできた貴重な資産群が見守る敷地で、季節ごとの「多満自慢」や各種ビールが提供されるため、“酒飲みのテーマパーク”と呼ばれています。
また、当主は代々名前を継承する慣わしで、役所などの所定の手続きを経て襲名すると聞き、伝統の継承はいかに大変かを知ることになりました。

(正面入り口と黒塀は雰囲気満点)
一歩酒蔵の中に足を踏み入れると、ひんやりとした空気と時間がゆっくり流れるような空間を肌で感じながら酒づくりについて説明を受けました。原料となる米は、日本酒醸造専用の酒米(山田錦など)だけでなく、私たちが普段食べている普通の飯米(コシヒカリなど)も使用して酒づくりをしています。おいしい日本酒を手頃な価格で消費者に届ける努力は、酒飲みだけでなく、多くの消費者にとってもありがたいですね。
お待ちかねの試飲は3種類がカップに注がれ、口の中で転がすように味わい、その特徴を確かめました。まろやかで芳醇なタイプから、しっかりシャッキリタイプまで、皆さんは自分の好みの一品を探すように慎重に品定めをしていました。

(ひんやりとした酒蔵の中で説明に耳を傾ける)
酒蔵内見学後は、敷地内の見どころスポットをご案内いただきました。酒づくりには欠かせない水、多摩川がもたらす豊かで良質な水が敷地内を流れ、仕込み水は地下150mから汲み上げられています。さらに、数々の国登録有形文化財や江戸時代からの酒づくりの歴史に関する多くの資料を展示する史料館、樹齢数百年の欅の木々など、見どころはたっぷり。

(多摩川の豊かな恵み)

(敷地内を見学)
お腹がすいてきたところで、敷地内のレストラン「福生のビール小屋」でランチタイム。食事とともに日本酒やビールを味わいながら、今日の見学のことや、元プレミアムカレッジ生として期を跨いだ交流に話が弾みました。

(会話が弾む)

ランチ後、敷地内に建設された宿泊施設「酒坊多満自慢」を見学させていただきました。木の温もりが感じられる造りで、ビジネス客やインバウンド客にリーズナブルな価格で寛ぎの時間を提供しているとの説明を受けました。確かに、ロビーの椅子に腰を掛けて緑を眺めていると、何かほっとするような安らぎを感じます。

(木の温もりを感じるゲストハウス酒坊で一服)
石川酒造から帰路につき、いったん解散したあとは、希望者で懇親会を行いました。今日一日を振り返り、皆さんの率直な感想をお聴きすることができました。
参加者の皆さんから寄せられた感想をご紹介します(抜粋)。
🍶大変有意義な一日を過ごすことができました。製造過程に直接触れ、磨きの実態や食米の利用など日本酒の知見が増え、製造原料や手法によっての差を試飲で確認できたり、酒造所のビール製造などこれまでの歴史を実感できる展示物、そしてカレッジ生との交流も楽しく実り多い一日でした。
ただ昼食もボリュームたっぷりだったので、立川での夕方の懇親会まで拝島を拠点に拝島大師であったり昭和記念公園のフラワーガーデンの散策とかの時間を挟むとかもありかなとも思いました。
🍶(一句)「酒蔵のひんやり寂寂初夏の午後」
あの酒蔵での試飲はとてもよかったです。
🍶石川酒造のスタッフの方のご案内で、蔵の中を見学させていただき、過去から今までの積み上げてこられた酒造りのお話をお聴きしたり、3種類のお酒の試飲もさせていただきましたが、作り方やお米の違いでそれぞれのおいしさがあることも発見できて最高の時間でした。
ランチも夜の懇親会も、皆様と一緒にたくさん美味しく食べられて、また皆様といろんなお話ができて大変楽しいひと時でした。
🍶門を入ると正面に大きな杉玉がつるされた古い土蔵と樹齢400年という夫婦欅が目に入りました。欅の足元にはかつて活用していた玉川用水の分水である熊川用水が流れ、深い井戸からくみ上げた仕込み水の手水もありました。明治13年創建の本蔵に入った途端、ひんやりとした空気と柱にしみ込んだカビの香りがすうっと鼻腔を刺激し、これこそお酒の生まれるところだという感慨がありました。
石川酒造は醸造所だけでなく資料館や和洋食のレストラン、ゲストハウスなども併設した多角経営の施設でした。前回訪ねた酒蔵と同様、何代も続く酒造りをしているだけでなく、廃業されようとしていたハム工場を継承するなど地域の代表として広く活躍しているのに感じ入りました。
🍶酒蔵FWは3回目の参加ですが、今回も初めて参加するような新鮮な気持ちで楽しませていただきました。脳の老化がそうさせている部分もあるかとは思いますが(^^; 毎回少しずつ違うメンバーと違う季節に・・・という部分も大きいのかも知れません。そして何より、企画される3人の細やかな心配りと想いが反映されているからだと感じます。夜のお食事の席でお三方のもっと会にかける想いを伺い、一層そう思いました。
私は個人的に酒坊がとても印象深かったのですが、平日とはいえゲストが一人もいないのが気になって帰ってから予約検索をしてみたら、意外に満室の日もあって少しホッとしました笑笑
🍶事前のロケハンやZOOMでの顔合わせ、丁寧な事前学習の資料のご準備など、細やかなお心配りに感謝の気持ちでいっぱいです。おかげさまで、一日を心から楽しく過ごすことができました。
石川酒造さんでは、女性の営業の方のご案内のもと、漆喰のひんやりとした蔵での見学・説明、日本酒三種の試飲、そして蔵のレストランでの美味しいお食事まで、すべてがとても充実していて、五感で楽しませていただきました。
夕べは、買って帰った六種類の日本酒を家で飲み比べて、余韻にひたっておりました。
🍶集合場所の拝島駅の立派さに驚きながら石川酒造へと向かい、目的地に着くとまずスッと伸びた夫婦欅と鯉のぼりが目に入りました。歴史ある二重扉の土蔵に足を踏み入れると、外の蒸し暑さと打って変わって冷んやりと別世界。お酒を造り貯蔵するため、一定の温度が保たれているとのこと。昔の人の知恵が伺えました。風格ある建物や緑の自然の中で、そして東京の水で育まれ造られたお酒のお土産を、家族はことのほか美味しいと喜んでくれ、FWの話がはずんだ一日でした。
🍶近隣で広がる日本酒コミュニティと、その伝統・文化を活かしたマイクロツーリズムの現場を体験しました。新しいもの、違うものに触れることの大切さにあらためて実感いたしました。貴重な機会をありがとうございました。
🍶久しぶりの時間を感じさせない皆さまと再会し、有意義で楽しい時間を過ごせたことに心より感謝です。外気と異なり、ひんやりと涼しい酒蔵は別世界のようで、そこで歴史を紡ぎ丁寧に造られる日本酒のお話を伺い、試飲までさせていただき、やはり日本酒は大人の嗜みだと再認識しました。その後見学させていただいた広い敷地には至る所に歴史を感じさせる風景がありました。
そんな深い日本酒の世界に触れさせていただけたので、これからは「やっぱり大吟醸が最高だわ!」なんて軽々しく言わないようにしようと思います。
日本酒の製造技術、味わいとそれを育み、守り続けてきた蔵元の奥深さに脱帽です。
記:森本 曉(1期生)
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