本会では、日本書紀に学んで古代日本社会の成立過程を多様な角度から探求することを主要な目的として、月次でオンラインのプレゼンテーション形式を基本に活動しています。
今回は、日本書紀神代編に関係の深い伊勢神宮周辺を2泊3日で巡るフィールドワークを企画し、7名のメンバーが参加しました。その概要について報告します。
Day1: 斎宮 → 月夜見宮
伊勢市に到着後、まず、斎宮を訪ねました。斎宮とは、斎王が住んだとされる宮殿です。斎王は、天皇に代わって伊勢神宮の天照大神に仕えるため、天皇の代替りごとに皇族女性の中から選ばれて、当時の都から伊勢に派遣されました。このような斎王制度は、7世紀後半頃に天武天皇の娘である大来皇女から始まり、平安時代から鎌倉時代と続きましたが、14世紀に武家勢力の伸長の中で消滅したとされています。斎宮歴史博物館では、当時の斎宮での生活を実感できる沢山の展示を見ることができました。
斎宮エリアを一巡した後、伊勢市駅に戻り、駅近くにある月夜見宮を訪ねました。月夜見宮では、天照大神の弟神である月夜見尊が祀られています。
Day2: 二見浦 → 外宮 → 神宮徴古館 → 倭姫宮
この日は、午前中に二見浦周辺を巡りました。最初に向かったのは、伊勢神宮に奉納する御塩の守り神を祀っている御塩殿神社です。境内には御塩を作る施設があり、神社付属の塩田「御塩浜」から運ばれた鹹水を煮詰めて、古式にのっとった方法で御塩が作られているとのことでした。
その後、秋晴れの下、海岸沿いに二見浦の夫婦岩や二見興玉神社まで散策しました。二見浦の地名は、天照大神鎮座の地を探していた倭姫命がその美しさから二度振り返ってご覧になったことに由来する、との言い伝えがあるそうで、その素晴らしい景色から思わず納得してしまいました。
次に、当初予定にはなかった賓日館に立ち寄りました。明治20年に建設された賓日館は、伊勢神宮に参拝する賓客の休憩・宿泊施設として、歴代諸皇族や各界要人が数多く宿泊された施設で、建物だけでなく庭園も含めて日本の伝統建築の粋を実感することができました。中でも、美しい貝合わせが所狭しと展示されている部屋があり、一同思わず見入ってしまいました。
賓日館を満喫した後、伊勢名物の「伊勢うどん」ランチを頂き、二見浦駅に向かいました。
午後は、伊勢市駅に戻り、外宮を参拝しました。外宮は、豊受大御神をお祀りしています。豊受大御神は内宮の天照大御神のお食事を司る神様で、衣食住、産業の守り神としても崇敬されています。まずは、入口近くにある博物館「せんぐう館」を訪ねて外宮の全体像を学んだ後、豊受大神宮の正宮に参拝し、その後、外宮内の別宮などを詳細に巡りました。
次に、神宮徴古館を訪ねました。神宮徴古館は、伊勢神宮の「歴史と文化の総合博物館」として、明治42年に創設された日本で最初の私立博物館で、伊勢神宮のまつりや歴史・文化に関する資料が多数展示されていました。
神宮徴古館に続いて、隣接する倭姫宮を訪ねました。倭姫命は第11代垂仁天皇の皇女で天照大御神のご鎮座の地を求めて各地を巡幸されました。そして、伊勢の国に入ったときに天照大御神から「ここにいようと思う」という御神託を受け、現在の五十鈴川のほとりに内宮(皇大神宮)を創建されたと伝えられています。
Day3: 内宮早朝参拝 → 月読神社 → 猿田彦神社 → 内宮
最終日は宿を夜明け前の5:30に出発し、今回のフィールドワークのメインイベントである内宮の早朝参拝に向かいました。ひんやりとした空気を感じながら人気のないおはらい町通りを歩き、ちょうど下弦の月がかかる宇治橋を渡って五十鈴川で手水をし、荘厳な雰囲気が漂う中、天照大御神をお祀りする内宮に参拝しました。
その後、宿に戻る途中で早朝から営業している赤福本店で、温かいお番茶と作り立ての赤福を頂き、ほっこり一息つきました。
宿にて朝食の後、1日目に参拝した「月夜見宮」と同じ天照大御神の弟神である月読尊を御祭神とする「月読宮」へ向かいました。国生み神生み神話に登場する伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)も祀られており、四社が一列に並んでいる風景には神々しさが漂っていました。
次に、天孫降臨を先導し、物事を良い方へと導く「みちひらきの神様」として知られている猿田彦大神を祀る猿田彦神社に参拝しました。
その後、再び内宮へ。今度は、別宮などを含めて境内全体を隈なく巡りました。
最後に、おかげ横丁周辺でランチと買い物をして、帰宅の途に就きました。
この3日間の歩行距離は30㎞を優に越え、歩数は5万5千歩以上となり、帰りの新幹線では心地よい疲労感に満たされていました。
今回のフィールドワークは2か月に亘る事前勉強会や行程検討を経て実現しましたが、その実情は、「シニアの修学旅行」の表現がピッタリだよね、との参加者の感想でした。
そして、早くも次回フィールドワークの行き先が話題に上っていました。
<記:増山憲司>
コメント
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