小雨予報で蒸し暑いなか、北鎌倉駅に集合。今回のFWは、建長寺で坐禅を体験し禅の心に触れるという、一人では尻込みしてしまうことを好奇心旺盛な皆さんと一緒にやってみようという企画です。
まず最初に向かったのは、北鎌倉駅前にある円覚寺。円覚寺は臨済宗円覚寺派の本山で、鎌倉幕府第八代執権北条時宗が中国(宋)から高僧無学祖元を迎えて創建した禅宗寺院で、鎌倉唯一の国宝建造物の舎利殿があります(公開は期間限定で今回は拝観できず残念!)。仏殿の釈迦如来や白龍の天井画のほか洪鐘(おおがね、国宝)などをたっぷり時間をかけて思い思いに拝観しました。歴史の深さや寺院の荘厳さとともに、目に青葉、早咲きの紫陽花など、清々しい気持ちになったところで、徒歩で建長寺に向けて出発。
建長寺に到着すると、まずは門前にある点心庵で腹ごしらえ。点心庵のけんちん汁は、建長寺発祥の調理方法が伝授され、野菜の皮やヘタを無駄にしないようにと発案された素朴な作りで、古の修行僧を偲びながら味わうことができました。けんちん汁という名前は建長寺に由来しており、「けんちょうじ汁」がいつの間にか「けんちん汁」になったと云われています。昔、小坊主さんが食事の豆腐を運んでいたところ落としてしまい、悲しげな顔をしていると和尚さんが「気にしないように」とそのくずれた豆腐を使って汁を作ったのが始めだという説もあります。なんともほっこりする話ですね。
食後は建長寺を拝観。建長寺は臨済宗建長寺派の本山で、鎌倉幕府第五代執権北条時頼が中国(宋)の高僧蘭渓道隆を迎えて創建した禅宗寺院で、国宝の梵鐘があります。午後から空模様が怪しげになり、時折強い雨が降り出し、傘を差したり仕舞ったりの繰り返しとなりました。建長寺の寺域は地獄谷とよばれかつては罪人の処刑場で、そこには地蔵堂があったといわれています。その場所に建長寺が創建されたため、仏殿の本尊は禅宗本来の釈迦如来ではなく地蔵菩薩です。また天井も、禅宗本来の鏡天井(平面)ではなく、和様の格天井(ごうてんじょう、格子状)となっており、これは江戸時代初期に芝の増上寺から移築されたものだからとのこと。このような歴史的背景を感じながら、脚に自信がある方々は建長寺の最も奥に位置する半僧坊への径、石段約250段に挑戦。
その後は、坐禅会場である方丈で約1時間の坐禅タイム。最初に僧侶から説明を受けた後、2回に分けて坐禅を体験し、法話もお聴きすることができました。裸足になりあぐらを組んで背筋を伸ばす。そして、顔は真っすぐ前を向き、視線は1mほど先の畳に向け、心静かに雑念を払い何も考えず「無」になる。言うのは簡単ですが、ついつい目を瞑ってしまい次第に顔はうつむき加減に、そして色々なことが頭の中をよぎり、警策(肩ないし背中を打つための棒)で打たれるピシッという音や激しい雨音が気になり、なかなか「無」になることはできません。やはり修行を積まないと難しいということをあらためて感じました。会場に入る前に強風の大雨に祟られ、皆さんびしょびしょの状態で坐禅を開始しましたが、不思議なことに体験修了後は晴れやかですっきりとした表情になっていたのが印象的でした。言葉では説明できない何らかの効果があるのかもしれません。
建長寺を後にし、希望者で鎌倉駅近くのレストランバーで反省会を兼ねた打ち上げを行いました。体験を振り返り、皆さんの率直な感想をお聴きすることができ、充実した1日となりました。
参加者の皆さんから寄せられた感想をご紹介します(抜粋)。
・最後に大雨に遭いましたが、雨の鎌倉も風情を感じるものがあり、また、半僧坊など多くの階段を登っていい運動になりました。江戸時代の海運に貢献した河村瑞賢の墓も訪れることができました。社会人の新人研修で1泊2日の禅寺修行以来の坐禅、般若心経朗唱の経験も感慨深いものでした。嘗てと違い体が硬くなり腹筋が衰えたことを実感し、日々の生活に坐禅、ヨーガを取り入れたいと思います。
・最後の大雨もさして気にならない楽しさでした。短くとも心に染みる若いお坊さんのお話に魂が清められ実に心地よい体験をさせて頂きました。そして時頼、時宗と絶頂期の北條氏の財力を実感させられる禅寺の美しさにも感じ入るものがありました。初参加でしたが、PCを卒業してもネットワークの輪が繋がり、”大人の遠足”仲間がいることに感謝ですね。
・とても良い内容の自主オリジナル企画でした。二つの寺院を回り、貴重な坐禅体験もあり、滞在時間にも十分配慮されたFWでした。初めての坐禅では、指導の方より納得の法話もあり、一時ではありますが禅の心に触れた感じがしました。円覚寺、建長寺では、壮大な建物や数々の国宝物を目にして、歴史の重みや流れを感じました。点心庵でのランチでは、素朴な味の「けんちん汁」で、これが本来の味なのかと思った次第です。また、PCの気心の知れた懐かしい仲間と一緒に時を共有できたことも、ありがたく感謝です。
・興味はあってもなかなか踏み出せないことって沢山ありますよね。今回の建長寺での坐禅体験もそういう類でした。もっと会の企画のお陰でようやく実現でき、感謝しています。新緑の円覚寺と建長寺巡り、そして午後の急な豪雨で足元がびしょびしょになってしまったことも楽しい思い出になりました。建長寺と円覚寺は共に臨済宗のお寺で似かよった伽藍配置になっていて、比較的近い時期、近い場所に建てられたのか、その背景について興味を持ちました。
・とっても楽しく思い出に残る体験でした。一度はと思っていた坐禅を体験できて、とても満足しております。鎌倉は奥が深いですから、また違ったコースでぜひ企画していただけたらと、希います。
・以前から一度経験してみたいと思いながら敷居が高かった坐禅会に参加することができました。厳しさは感じずお坊さんの説明の言葉がしみいるようでした。雨の音だけが響く方丈での坐禅、眠かったという方もいらっしゃいましたが、私自身は案外集中できてどこかふわっとした気分でした。ただ、脚を組んで座っている間は平気なのに、中休みでいったんほどくとつりそうになり参りました。これも日々続けることが大切なのだろうと思います。家にいるときにも座ってみたいと考えています。
・鎌倉五山の第一位の建長寺、舎利殿が国宝で名の知れた円覚寺に絞って、ゆったりと散策できたことが良かったです。建長寺での坐禅体験は、雨にも恵まれ貴重な体験となりました。予習不足を補ってくださった解説もありがたかったです。次は母と鎌倉、姉と鎌倉、娘と鎌倉、夫と・・?初めての鎌倉は、何度も訪れたい場所となりました。
・坐禅、お経、八重椿、お寺、彫刻、歴史、食事、お皿…。物事を感ずるということをさまざまな場、会話から学ぶことができました。FW翌日、小林秀雄「美を求める心」を読み返しました。坐禅で和尚さんのお話に通じていて、かくありたいとあらためて思いました。
・前半はちょうどいいお天気で、美味しい空気をいっぱい吸い込んで気持ちよく森林浴ができました。けんちん汁は私がいつも食べているものよりだいぶ薄味で意外でしたが、上品なお味でした。そして坐禅の時にはズブ濡れで座布団に座るという思いがけない経験となりましたが、逆に印象深く心に残る思い出になりました。私には坐禅の姿勢よりも、目を閉じないで伏せるだけというのが難しかったです。
・坐禅をメインテーマに、円覚寺と建長寺の散策に絞った企画はコンパクトにまとまっていて非常によかった。禅というものに対する理解が進んだと思う。特に、今までやりたいと思っていてもなかなかできなかった坐禅を初めて体験できて感謝しています。雨だったから逆に雰囲気があってよかった???終わった後の懇親会もよかったですね。
皆さん、それぞれ何かを感じ取られたようですね。
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