【活動報告】2023.11.22 日本をもっと知りたい会 江戸小紋を学ぶFW開催

 11月22日、八王子市内で江戸小紋の伝統工芸を守り続けている石塚染工さんを訪問し、江戸小紋の袱紗(ふくさ)作りを体験しました。

 石塚染工さんは明治23年小田原で創業し、明治30年(1897年)糊落としに最適な淺川近くの現在の八王子の地に移りました。五代に亘って江戸小紋染めの技術を受け継ぎ、四代目石塚幸生先生(写真右から2番目)は、経済産業大臣認定伝統工芸士、東京都マイスターとして活躍され、叙勲を受賞されています。また五代目である娘の久美子さん(写真右端)は、父の背中を追って厳しい世界に自ら飛び込み、新たな思考も取り入れながら伝統を守る努力を続けておられます。そのような高い技術に裏付けられ長い伝統をもった工房で体験できる貴重な機会となりました。

 今回は、白生地の上に伊勢型紙を乗せヘラで防染糊を均等に置いていく、染めの最も重要な工程「型付け」という作業を体験させていただきます。実際の製品は「型付け」のあと、「地色染め」「蒸し」「水洗い・自然乾燥」「湯のし(大きなアイロンローラーに挟み熱と蒸気で生地のシワと巾を整える)」「地直し(柄につなぎ目の染めムラを筆でぼかす)」などの工程を経て初めて仕上がります。
幸運にも匠が「型付け」の作業をしておられるところを訪問したため、思いがけず匠の技を目の当たりにすることができました。無駄のない手さばきに皆さんは息を吞んで見入り、見事な職人技にため息が出るばかりでした。

 次に工房内の作業場を見学し、「型付け」以外の具体的な作業工程についても説明をいただきましたが、夏はエアコンなしの酷暑、冬は凍てつく水洗いとあまりにも厳しい作業環境に驚きを隠せませんでした。

 自分の好きな袱紗の色、柄をチョイスし、いよいよ作業開始です。匠と娘の久美子さんにきめ細かい手ほどきをいただきながら、おっかなびっくりで糊付けは始まりました。ヘラの微妙な角度調整や指先の力加減で、出来上がりの様子が変わることを確認しながら、ネームを入れるなど、My袱紗づくりは順調に進みます。お互いの出来栄えを比較しながら、作業の難しさやコツなどに話が弾みました。

「型付け」作業終了後は、石塚染工さんの作品を見せていただくとともに、先ほどの作業で使用した伊勢型紙の製作工程の動画を拝見しました。伊勢型紙がいかに手間と時間をかけて一枚一枚丁寧に作られているかという内容で、だからこそ長く受け継ぐことができる繊細さと耐久性があることを知りました。

 志を同じくし、新たな道を切り開くために邁進する父娘のいい笑顔にほっこりしますね。
今回、江戸小紋づくりの一工程ではありましたが体験させていただき、その情熱とご苦労を肌で感じることができました。また、伝統継承は決して簡単なことではないことも痛感し、次の世代に引き継いでいくために何が必要かを考えさせられたFWでした。

参加者の皆さんから寄せられた感想をご紹介します(抜粋)。

・江戸小紋の細やかな技術、長い工程を経た美しい仕上がりに触れ、後世に残さなければという若い5代目の決意が伝わってくるようで、ずっと残すべき日本の伝統を実感できました。

・今回の江戸小紋は特に、専攻科の修論のテーマだったこともあり、とても楽しみにしていました。事前にお知らせいただいたYouTube等でしっかり事前学習(笑)していたので、久美子さんのお気持ちに深く共感すると共に、技術の伝承についても考えさせられながら参加させていただきました。また、自分がカレッジ在学中に学んだことの復習をしているような気がして、色々なことを思い出しました。まさに「日本をもっと知りたい」気持ちになる、大変有意義な時間でした。

・伝統工芸士・現四代目石塚幸生氏から直接ご指導いただき、江戸小紋三役と呼ばれるものの一つである“鮫柄”の「型付け」という貴重な体験をすることが出来ました。家業を受け継でいく決心をされた五代目石塚久美子氏のお話によると、やはり年数と経験が重要であるとのこと。染めの工程における地色作りや地直しなど、時間をかけて日々努力を惜しまないお姿に頭が下がりました。また、若い世代に関心を向けてもらうために新しい色作りも工夫されていて、伝統工芸に対する思いが伝わってきました。シルクスクリーンという新しい技法も出現する中で、「型染め」の伝統的な技法で作られる「本物の江戸小紋」には、温もりが感じられ、長い時を経たヒトの心が伝わるのだなと思いました。

・まず石塚さん父娘のお人柄に引き付けられました。職人気質らしくどっしりとした安定感がありながら気さくに指導してくださるお父様、にこやかな表情で作業を丁寧に説明してくださる娘さん。おふたりとも積み上げてきた技と経験の深さがその表情に表れ出ているのを感じました。順を追って作業工程の説明を受け、なんとなく知っているつもりだった江戸小紋の染色の工程が複雑で手間のかかるものだということ、また体験の後に拝見したビデオで気の遠くなるような手間と時間をかけて伊勢型紙が作られていくのにも嘆息しました。それでも、一反の布地が仕上がるまでに人々のかける労力の一部であることを想うと江戸小紋の、そして日本の伝統文化の奥深さに感じ入るものがあります。何とか絶やすことなく伝承していってもらいたいと祈るばかりです。体験そのものは丁寧にご指導いただき何とか形を整えられました。のりを置くだけの作業とはいえ、自分の手をかけた作品が出来ること楽しみにしています。

・自分で型染めの体験ができ、とても有意義でした。そして、色、模様等を各種類の中から選ぶことができたのも自分独自の作品ができ、大満足でした。石塚染工様が分かりやすく丁寧に教えてくださったおかげです。問屋さんから頼まれた色を出す現場を見ることができ、ご苦労もよく分かりました。私、個人としては、上前と下前の模様の違う半衿を購入できたのも嬉しかったです。この半衿をつけて、着物ライフを楽しみます。

・白い絹地に伊勢型紙をのせ、防染糊をおく、型付けの工程は、実際にやってみると匠のように簡単にはいかず、苦戦しました。好みの型で、染め上がった帛紗が手元に届くのが楽しみです。石塚染工さんでは美大出身の後継者が、伝承に加え、自分の創意工夫によるブランドも立ち上げておられ、新しい江戸小紋の形も見せていただきました。今回もまた、体験型のFWを存分に楽しませていただき、ありがとうございました。

・私が、今回のFWで最も印象に残っているのは四代目の石塚幸雄さん、五代目の久美子さんの表情や仕草から、伝統職人としての誇りと美しさを感じたことです。その事は見せていただいた江戸小紋の染めの繊細さにも表れていました。また、染めの工程の説明をうけながら見学した時に、なかなか大変な作業だなと知り、こうやって幾重もの手作業で創られている江戸小紋が愛おしく思えました。今後、私にできる形で応援できたらなぁと思っています。体験の染めの糊付け作業を、緊張しながらも(手伝って頂きながら)取り組むことができ、どのように帛紗が仕上がるのか楽しみです。

縫製されて完成したMy袱紗を手にするのが楽しみですね。

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