開催日 : 2024年4月25日(木)
開催場所 : オンライン
出席者 : 荻野、関、増山、森本、宮嶋、深田、柳下、鈴木[入会順、敬称略]
<発表者> 森本
今回の発表は神功皇后の続編で、内政を掌握するため、北九州から大和に向けて出兵し、反目する勢力を制圧するという進軍ストーリーの解読です。
神功皇后は新羅に出兵したあと帰国し、応神天皇を出産しました。自分の息子である応神天皇を次期天皇に据えるためにも、大和の地で反目する勢力を制圧することが必須でした。この反目する勢力とは、仲哀天皇(神功皇后の夫)の妃の2人の皇子で、神功皇后・応神天皇勢力と戦いになります。そして、神功皇后は幼い息子(応神天皇)の安全を守るため、太平洋を回る南海ルートで和歌山に移動するよう重臣の武内宿禰に託します。一方、皇后自身は、敵勢力が待ち受ける瀬戸内海ルートで新羅進軍の時のように勇ましく正面突破し、敵軍を退却させます。物語の舞台は、明石~神戸~武庫川~大阪(兎我野、住吉)~和歌山~京都/宇治~大津へと移動しながら展開され、遂に大和側勢力を打ち負かし、自ら摂政の立場で政を行い内政を掌握しました。
ここで疑問が浮かびます。何故、安全な南海ルートで進軍しなかったのか。そこには何か日本書紀編纂者の意図が隠されているのではないかとも勘繰ってしまいます。例えば、瀬戸内海ルートはかつて初代神武天皇が東征したルートであり、神功皇后の東征と重ねることにより神武天皇同様の威厳を与えたかったのではないかと。では何故そのような威厳を皇后に与えたかったのか。これも下衆の勘繰りかもしれませんが、圧倒的な権威付けを背景に、次期応神天皇を擁立する強力な体制を作りたかったのではないかと。そのためにも、皇后は摂政という立場で体制づくりを急いでやらねばならなかったのではないかと。また編纂者は、初代女性天皇である第33代推古天皇の前振りとして、同じ女性である神功皇后に権威付けを行い、後付けの歴史創作を行ったのかもしれません。その推古天皇の摂政として活躍したのが有名な聖徳太子です。つまり、天皇同格の皇后(女性)や政を行う摂政という立場が、推古天皇や聖徳太子よりずっと前に事実上あったという創作ではないのか、等々。
想像は想像を生み、妄想となって参加者の皆さんと活発な意見交換が始まりました。空白の4世紀と言われ、神功皇后の存在さえ不透明ななかで、まさにミステリー小説の謎解きを楽しむように時間は過ぎていきました。
一方で、今回の内容に記述されている実際の場所(神社、地名など)を地図で確認すると、バーチャル・フィールドワークを楽しんでいるような錯覚に陥り、機会を見つけて現地を是非訪れたいという思いを強く持ちました。ミステリーな妄想世界と神社・地名などの現実世界、2つの対照的な世界が交錯する発表となりました。
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