開催日: 2021年7月15日(木曜日)
開催場所:オンライン
出席者: [入会順、敬称略]
荻野、関、増山、森本、宮嶋、深田、柳下
発表者: 柳下
投稿者: 荻野
第4回は、柳下さんによる「巻第六 第11代垂仁天皇」。
纏向に都を移し、農業・水田開発に取り組み、殉死の風習を廃して埴輪利用に舵を切り、娘の倭姫命に命じて天照大神を伊勢神宮に祀らせるなど、現代に繋がる多くの足跡を遺してくれた天皇だということが紹介されました。
柳下さんが今回特に注目したのは、わが国に「橘」を持ち帰り「菓子の祖」と伝承される「田道間守命(たじまもりのみこと)」を「常世国」(*1)に遣わしたこと。田道間守命が、病床にあった天皇の意向を受けて、不老不死の霊薬とされる「非時香菓(ときじくのかぐのみ)」を持ち帰ったのは既に天皇が崩御されたあと。天皇の御陵に橘の木と果実を捧げ、嘆き、泣き叫びながら命を絶ったと伝えられています。垂仁天皇の墓所とされる菅原伏見東陵に隣接する小島は「伝田道間守墓」と伝えられているとか。橘が文化勲章や500円硬貨に描かれているのは「文化には永劫性がなければならない」という昭和天皇のご意向で、橘には文化の象徴としての意味があるのだそうです。
(*1) 古代日本で信仰された、海の彼方にあるとされる異世界。一種の理想郷として観想され、永久不変や不老不死、若返りなどと結び付けられた、日本神話の他界観をあらわす代表的な概念で、古事記、日本書紀、万葉集、風土記などの記述にその顕れがある。
ミカン科の橘の実は、酸味が強く、マーマレードなどの加工品に使われるそうですが、当時は甘いものと言えば果実だけの時代。そのためこれを持ち帰った田道間守命は「菓子の祖」と称され、彼を祀る中嶋神社(兵庫県豊岡市)では、命日に近い4月に「菓子祭(橘香祭)」が開催されているそうです。
浅葉なつ氏の「神様の御用人3」の「第四柱 橘の約束」では、お菓子の神様としての自信を無くしていた田道間守と出会った主人公が、一緒にお菓子づくりをして出来上がったオレンジ風味のシュークリームを菅原伏見東陵へ持参し、垂仁天皇に召し上がっていただき、菓子祖としての自信を取り戻すというストーリーが描かれているそうです。アニメかと思ったら小説なんだそうです。
柳下さんは「日本書紀の一遍に注目しただけなのに、こんなに興味が膨らんだ」と感激しきりでしたが、菅原伏見東陵、中嶋神社へのフィールドワーク企画の他、次のような「巻第六 第11代垂仁天皇」の伝承巡りや読み解きを楽しみたいと仰っていたのが印象的でした。
・角力(相撲)の元祖
・狭穂姫「狭穂彦王(さほびこのみこ)の謀反」
・倭姫命「伊勢の祭祀」
・埴輪「野見宿禰と埴輪」
・かぐや姫伝説(迦具夜比売命 (かぐやひめのみこと))
以上
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