第17回 八雲PC読書会報告

 5月29日、第17回八雲PC読書会を開催しました。
今回は他のイベントとの日程重複などもあり、参加者はなんと3名。「読書会というより座談会では?」という声も聞こえてきそうな人数でした。しかし、少人数だからこそ一人ひとりがたっぷり話すことができ、結果的にはいつも以上に濃密な時間となりました。
 今回紹介された本は、
・『福音派-終末論に引き裂かれるアメリカ社会』(加藤喜之著)
・『ハンセン病を生きて~きみたちに伝えたいこと』(伊波敏男著)
・『幸せな選択、不幸な選択』(ポール・ドーラン著)
の3冊でした。

『福音派-終末論に引き裂かれるアメリカ社会』
 最初に紹介されたのは、アメリカ政治を理解するうえで欠かせない存在となっている福音派についての一冊です。
 本書は、1950年代から現代までのアメリカ政治と福音派の関係をたどりながら、カーター、レーガン、ブッシュ、オバマ、トランプといった歴代大統領との関わりを描いています。ニュースで耳にする「キリスト教ナショナリズム」や中絶問題、同性婚問題、イスラエル支持の背景なども分かりやすく解説されています。
読書会では、「原理主義とは何か」「終末論とは何か」「なぜ福音派はトランプを強く支持するのか」といったテーマを中心に議論が進みました。
 紹介者は、福音派伝道者ビリー・グラハムについて、熱心なクリスチャンだった祖母が深く傾倒していたことを思い出したそうです。1967年に日本武道館で開催された大規模伝道集会の話題から、前年のビートルズ武道館公演、さらに翌年の安田講堂事件や全共闘運動へと話は広がり、参加者それぞれの記憶と歴史が交差する興味深い時間となりました。
 また、イスラエル建国や中東情勢、イラン革命、映画『アラビアのロレンス』『栄光への脱出』なども話題となり、現代のパレスチナ問題やトランプ政権の外交政策との関連についても議論が及びました。
 宗教の話から歴史へ、歴史から国際政治へ、そして再び現代アメリカへ。少人数だからこそできる自由な脱線もあり、「読書会なのか国際情勢研究会なのか分からなくなってきた」という場面もありましたが、それもまた八雲PC読書会らしいひとときでした。


『ハンセン病を生きて~きみたちに伝えたいこと』
 二冊目は、東村山市の国立ハンセン病資料館や多磨全生園のフィールドワークをきっかけに読まれた一冊です。著者の伊波敏男氏は14歳でハンセン病を発症し、療養所での隔離生活を経験しました。病気が治癒した後も社会に残る偏見や差別と闘いながら生きてきた自身の体験をもとに、ハンセン病問題の本質を語っています。
 読書会では、ハンセン病に対する差別の歴史だけでなく、原爆症によるケロイドへの偏見、水俣病患者への差別、さらには結核との社会的な扱いの違いなどにも話題が及びました。 特に印象的だったのは、「病気そのものよりも、人々の無知や無関心が差別を長く存続させた」という指摘でした。
 また参加者からは、「これは過去の話だけではないのではないか」という意見も出されました。コロナ禍では、医療従事者や介護職、配送業務などのエッセンシャルワーカーとその家族に対する偏見や差別が問題となりました。保育園や学校で心ない扱いを受けたり、感染者の多い地域から来た人を警戒したり、「東京の人は来ないでほしい」といった反応も各地で見られました。
 もちろんハンセン病問題と単純に同列には語れません。しかし、人間は未知の病気や感染への不安や恐怖に直面すると、理性よりも感情が先に立ち、特定の人々を排除しようとする傾向があることを改めて考えさせられました。
 ハンセン病は治療法が確立されていたにもかかわらず、長年にわたって断種強制隔離政策が続けられました。その背景には行政や医学界、法曹界、マスコミなど社会全体の責任があったこと、そして2001年の熊本地裁判決と政府謝罪の後も偏見は簡単には消えなかったことなどが紹介されました。
 参加者からは、「歴史を学ぶことは、過去の過ちを知るだけでなく、自分たちの現在を見直すことでもある」という感想が聞かれました。

『幸せな選択、不幸な選択』
 三冊目は、行動経済学者ポール・ドーランによる幸福論です。
今回は事前配布した資料をもとに、「幸せとは何か」をテーマに自由な意見交換を行いました。また、これまで読書会で取り上げた『死すべき定め』『グッド・ライフ』『ライフシフトの未来戦略』とも比較しながら議論を進めました。
 『死すべき定め』が人生の終盤や死との向き合い方を、『グッド・ライフ』が良好な人間関係の重要性を、『ライフシフトの未来戦略』が長寿社会における人生設計を論じていたのに対し、本書は「人は実際には何によって幸福を感じるのか」を行動経済学の視点から分析しています。
 当日参加できなかったメンバーからもメールで意見が寄せられました。
「幸せな一日を積み重ねることが人生全体の幸せにつながる」
「健康が何より大切」
「学ぶこと、知ること、人と話すことが生きがい」
「家族や仲間とのつながりを大切にしたい」
など、シニア世代ならではの実感のこもった意見が紹介されました。
 議論の中では、「プレミアム・カレッジの同窓会や読書会に参加している私たちは、健康面でも経済面でも比較的恵まれた人が多いのではないか」という率直な指摘もありました。
 また、「70代になると物欲はかなり減る」「ユニクロやワークマンで十分満足している」といった発言には全員が大きくうなずき、今回最も意見が一致した場面だったかもしれません。
 さらに、高齢者が昔話をすることの意味についても話題になりました。単なる懐古趣味ではなく、自分の人生を振り返り、その経験を整理し意味づける営みとして重要なのではないかという意見も出されました。
 最後は、「同じ境遇や状況でも幸せと感じる人もいれば、不幸と感じる人もいる。だからこそ、一人ひとりが自分なりの価値観の中で、小さな喜びややりがいを見つけていくことが大切なのではないか」というところに議論が落ち着きました。

おわりに
 参加者わずか3人という、八雲PC読書会始まって以来とも言える少人数開催でした。しかし、アメリカ政治と宗教、中東問題、ハンセン病と差別の歴史、コロナ禍での私たち自身の経験、そして人生の幸福論まで、議論の密度はむしろ過去最高クラスだったように思います。
 振り返れば今回も、宗教から歴史へ、歴史から国際政治へ、感染症と差別の問題から現代社会へ、そして人生の幸福や老後の生き方へと、話題は縦横無尽に広がりました。
人数の多い回も楽しいものですが、たまにはこんな「濃縮還元100%」の読書会も悪くありません。

次回は6月26日(金)NHK大河先取り『小栗上野介と明治維新』
・小栗上野介再評価
・勝海舟との比較
・幕末官僚としての能力
・「もし小栗が生きていたら明治は変わったか」
などなど楽しく語り合いたいと思います。

文責:正田、小原

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