2026年5月29日、八王子浅川沿いで藍染の伝統を守り続ける野口染物店を訪れ、ジャパンブルーの源泉というべき「藍」について学び、実際に藍染を体験させていただきました。
まずは、いくつもの藍甕が並ぶ前で七代目店主より、当店の歴史と藍染の概要について説明を受けました。当店では、徳島県産の藍の葉を発酵、乾燥させた‘すくも’を使用しており、その時の気温や湿度によって藍の機嫌が変わるため、染まり具合も様子を見ながら染め方を調整するとのこと。今回は5つの藍甕を使わせていただきましたが、それぞれ濃淡や染まる速さなどが違っていて、自分が染めたいイメージを抱きながら自由に使い分けることとなりました。

野口染物店七代目より藍染の概要とやり方について説明を受ける)
続いて、工房内を案内いただき、伊勢型紙を使って染めた見事な反物を見せていただきました。藍甕のなかに反物を浸けてしまうので、染めたくない部分(本来の反物の色を残したい部分)を伊勢型紙を使って糊付けをします。その際、表と裏の両面に糊付けをしなければならず、型紙の位置は寸分の狂いもないようにすることが求められるため、非常に高度な職人技術が求められます。
実際に染め上げられた反物を光に透かしてみると、糊付けして染まっていない部分は白く輝いているため、藍のブルーとのコントラストが際立ち、皆さんは驚きと納得のため息をついていました。

(反物の藍染について説明を受け、完成度の高さと高い職人技に感動)
さあ、いよいよ藍染体験です。
店主より事前に、“店で準備可能な手ぬぐいやバンダナよりも、自分が染めたい物を持参する方が、愛着がわいて長く使うことになるのではないでしょうか”というアドバイスを頂いていたので、皆さんにアナウンスしたところ、殆どの方が色々なものを持ち込むこととなりました。シャツ、ストール、バンダナ、ブラウス、帯揚げ、和紙の糸、トートバッグ、等々。自分のための物、家族へのプレゼント、また親しかった家族が残した思い出深い物にもう一度輝きを、とその目的も千差万別。
また、染め方もそれぞれ。単色染めをはじめ、甕に浸ける前に糸や輪ゴムで縛った模様が綺麗な絞り染め、甕に浸ける部分をその都度変えて仕上げるグラデーション染めなど、イメージを思い浮かべながら、いざ実践。甕から出し、広げて空気に触れると、淡緑色だったものが、みるみるうちに鮮やかなブルーに変色するという藍染の不思議に驚きの歓声が上がりました。
甕のなかの藍の独特の匂いと感触を確認するため、なかには手袋を付けず素手で作業し、手も真っ青に染めながら進める方も。そう言う筆者もそのなかの一人ですが、作業後の真っ青な手はスベスベになっていることに気づき、あらためて藍の生命力を実感しました。

(染め方の説明を受け、絞り染めの事前準備)


(藍甕~水洗い~天日干しの繰り返し)

(作業が一段落し、水分補給とおやつタイムで一息)

(天日干しの作品群とお世話になった野口染物店七代目ご夫妻)
藍染体験が終了し、いったん解散したあとは、希望者で懇親会を行い、今日一日を振り返りました。
何はともあれ、皆さんのオリジナルティ溢れる作品集を見て、感想(抜粋)に目を通していただければ、深まった藍への理解と感動を感じていただけると思います。

(皆さんの力作!)
🔵呉服・太物屋を舞台にした江戸期の時代小説を読み、着物の多様な織り方&色付け技法、色自体の多様性を知りました。着物に無縁なため色合いが書いてあっても想像できないことから天然染料の書籍を読み、①綿は絹と違い染まりが悪く色落ちしやすいこと、②一方、江戸期から普及した綿は藍とベストマッチであることを知り、正に今回の藍染め体験はぴったりでした。日頃から芸術的活動、手仕事・工芸的活動に凡そ無縁の生活をしているので、今回、少し大袈裟に言えばクリエイティブ体験をさせてもらい、本を読むだけで終わることなく実践する機会を得られ大変有意義でした。藍は紀元前数年前から染料として使われ、化学的知識なしにその不思議な効力を発見した人類の英知、更に日本独自の技法を開発した先人達の知恵に敬意を表します。
🔵事前打ち合わせや情報なども詳細で、事前準備や事前学習のご案内なども完璧でWEBを見ていたせいか、当日の社長さんのご説明もすんなりと頭に入りました。
早速私はハンガーにつるして「風通し」をしておりますが、秋口あたりに作品を持ち寄って身につけてのオフ会などができたら、番外編として楽しいのではないかと思いました。学習した上で実際に手を動かして体験し、何かに触れる、というのはとてもよいことだと思いました。
🔵「”藍染”はコーティングなんです」という7代目の言葉を、作業を進めるにつれて実感しました。合間には藍染の季節による違い、特に夏は「発酵がどんどん進むのが良い。ただし、型付けを行った後の糊が暑さで溶ける懸念がある」「持ち込まれた木桶は染まりにくく、流木はバッチリ染まった」といった話も伺うことが出来ました。職人さんとの交流は、もっと会ならではの体験でした。また、参加者同士が漬ける時間等をアドバイスし合い、各自が工夫を凝らした素晴らしい出来栄えの作品を目にして、楽しく充実した時間を過ごせました。最後に、漠然と紺色のイメージを抱いていた藍色は、濃く深い色に染めても”藍色”なのだなと陰干し継続中の今、しみじみと感じています。
🔵三年前に急逝した敬愛する叔母の趣味のひとつが藍染めでした。昔プレゼントされたいくつかの作品が手元にあり、機会があったらいつか自分も体験してみたいと思っていたので、今回それが叶って大変嬉しいです。藍草の発酵した匂いを初めて嗅ぎ、甕によって色の濃さが異なる事や、藍汁につける時間や回数によって風合いの違いが出ることを知りました。自分で作製したトートバッグを眺めながら、自然の植物である藍の葉から、こんなに温かみのある染色ができることを発見した先人の知恵は素晴らしいなとしみじみ思いました。
🔵
1.化学的変化の学び
藍染は、藍の葉のインディゴ(水に溶けない青)を微生物の発酵の力を利用して酸素を奪い、還元させ水に溶ける形にする。布の繊維に浸みこませた後に空気中の酸素に触れさせて青くさせる(酸化)という原理であることを目で見て体験することができました。特に、灰汁を加えて好アルカリ性細菌だけを生育させ、その菌の呼吸で還元作用を導いている。その呼吸の状態、発育の状態で青色状態にバラツキを生じさせ48種類の藍色を作っているのがとても興味深いところでした。
2.野口染物店の温かさ
野口染物店の作業場のところどころに創業210年の歴史が見受けられました。品質を受け継いで伝統を守ることで自然と商売が繋がっていくという形、その歴史の中にご夫婦とその親御さんの人間味と温かさを感じました。
3.1期のホスピタリティ
楽しくさせてもらえたのは、相変わらずの1期生メンバーのホスピタリティの高さです。自然と仲良くさせてもらえ居心地が良くその空気に溶け込むことができました。
🔵信号機の緑を「青信号」、瑞々しい木々を「青葉」、野菜を「青果」と呼び、青い「海」、青い「空」、青いブランドカラーなど、日本独特の言語・文化的要因が重なり合って、日本で「青」が多用されているように思います。そこには江戸時代の藍染文化という歴史的土壌があることを、藍染体験を通して肌で感じました。人生初の貴重な機会となりました。
🔵数年前、東京伝統工芸の展示があり、今回伺った紺屋さんの6代目にお会いしました。「表裏同じ柄で、両面染めができるのは、うちだけだ。」と、誇らしげにお話いただいて感心したものの、着物に仕立てれば裏は見えないのに、裏まで染めるのはなぜかという疑問がずっとありました。この会でお世話になった7代目から、「青はより青く、白はより白く見せるための、職人の心意気です。」と回答いただき、腑に落ちました。
🔵ぷくぷくと泡が生まれ真っ黒な液体なのに、浸した布は綺麗なブルーに。なんとも神秘的な藍甕。チャレンジしたブラウスとトートバッグは望み通りのやや淡めの空色に染め上げることができました。この伝統的な藍染の技術を若いご夫婦が継がれていることに少し安堵を覚えつつ、感謝を込めて一句。
「藍甕の染め上がりてや五月晴れ」
🔵土間に埋め込まれた甕の中で静かに醗酵して何とも言えないにおいを醸している植物の不思議には、以前から引き込まれ興味を抱いていました。あの中に布を浸してみたいものだなあと思いながら実行できないでいましたが、絶好の機会と今回の企画に参加しました。私たちが体験するのはもちろんごく簡易なものです。それでも甕から引きあげた時は淡い草色だった布が空気に反応して次第に藍色に変化していく過程に目を見張りました。何度か甕に出し入れする作業を繰り返し、好みの色合いになったところで出来上がりとするのですが、乾かしてみると色合いは微妙に変化し、これこそ工芸の醍醐味だと感じました。本職の職人さんのご苦労は想像のすべもありませんが、手仕事の体験はとにかく楽しかったです。
🔵輪ゴムでぐるぐる巻きにしたTシャツごと藍甕のなかにそっと手を入れると、ひんやりとした心地よさが手から伝わってきて、同時に生きている藍に触れているという感動もありました。どんな仕上がりになるのかはわからない「絞り染め」のドキドキ、ワクワクの非日常の感覚が嬉しくて、そしてこのメンバーの中では、はしゃいでも許されるような空気感の中で(うるさかったらごめんなさい)、仕上がりの感動は予想以上でした。青空の下、風に揺れる作品たちの光景は、「みんな違って、みんないい」オリジナルが並ぶ清々しいもので、なんか私たちみたいだなと‥
🔵藍染めについてはなんとなくの知識しかなく、でもとても興味はあったので、今回このような機会をいただき、その仕組みから学ぶことができて、大変有意義な体験となりました。日本の伝統と技術を守り続ける職人さんはどんどん少なくなってきてしまっていますが、こんな風に江戸時代から続く工房が東京に残っていることは、とても嬉しく誇らしい気持ちです。当日はお天気も良く、皆さんでわいわいと体験できて、本当に楽しい時間でした。そんな団体にお付き合いいただき、みんなのわがままな(笑)要望にも一つ一つお応えいただき、ご指導くださった野口さんご夫妻にもとても感謝しています。
記:森本 曉(1期生)


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